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CASSHERNを観て [映画(DVD)]

「あなたの幸せ願うほど 

 わがままが増えてくよ

 それでもあなたを引き止めたい いつだってそう

 誰かの願いが叶うころ

 あの子が泣いているよ」

(宇多田ヒカル「誰かの願いが叶うころ」より)

「CASSHERN」を観るまではこの歌は万人が幸せになることができないエゴとエゴのぶつかりあいである恋愛の悲哀を歌ったものだとばかり思っていたけど、この映画のエンディングで聴こえてきたそれは、この曲に対しての今までの印象を塗り替えるものだった。

この曲。母親が戦争に出向いた息子を思い無事に帰ってきて欲しいと願い、それが叶ったときにその願いは他の母親の願いを消し去るものかもしれないといったような事が起こってしまう「戦争」の悲哀を歌っているように聞こえてきたのだ。

CASSHERN

宇多田ヒカルのPV『Traveling』、『光』、『SAKURAドロップス』などの映像演出で知られる紀里谷和明監督が、その独自のイマジネーションを駆使して映画化した話題作。劇場公開されていた頃からずっと観たかったのだが、ずっとタイミングを逃し続けてきてやっとこ鑑賞。

彼のPVは個人的にも大好きだったので結構期待して観る。

役者が、ずっとブルーバックの前で演技したという全編CGで描かれた美しい背景。ほぼ全てのシーンに色調補正をかけているコントラストの強い画像。また、全編全てのアングルがその場面で静止をかけたとしても美しい構図。と、「CASSHERN」の映像感は今までの日本映画とは一線を画すものであった。ただ、それは非の打ち所がないという意味ではない。映像という意味では逆に美しすぎる構図をゆったりとストーリーの流れに関係なく見せられることに強烈な違和感を感じる場面や退屈に感じてしまう場面も多々ある。

脚本は、世界観の構築のためであることはわかるにしても、変に難しい単語や言葉遣いを多用しているせいで、かなりわかりにくい。物語のあちこちに「あれ?どうして?」と思わせるツッコミどころを配置して最後に一気に解決してビックリさせる手法をとっているのだが、いかんせん話の規模がでかいせいか説明的になってしまっているし、また説明しないままの箇所も多々あり消化不良な部分は否めなかった。

が、役者陣のいきいきとした演技もあり世界観に入り込めなかったとしても十分に感情移入できる余地はあり(入り込めない人たちがいるのも理解できる)、やるせない悲しい結末に胸が熱くなってしまう。

一言で感想を言えば、映像に関しても、脚本に関しても意欲作であるがゆえに賛否が分かれるであろう作品で「いい意味でも、わるい意味でも自主制作映画のよう」な印象を受けた。きっと、「好き」「嫌い」がわかれる映画だなぁと思いつつネットで作品の感想を探してみるとまさに賛否両論の嵐で「観る時間も無駄な駄作」という声から、「日本映画の枠を超えた傑作」という声まで本当にさまざま。

ただ、「好き」にしろ「嫌い」にしろたくさんの意見が生まれるのは映画にとってとてもいいことだと思うので個人的にはかなり評価してるし、「好き」な作品です。観たことが無い人は肌に合わなければ途中で観るのを止めてもいいやというスタンスでいいから観て欲しい作品かも。


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コメント 11

ken

2004年最高のヘタレ映画でしたけど、話題になるということだけは
良かったのかも知れませんね。
もちろん皆がそれだけ期待をかけていたという裏返しですけど(笑)。
TBさせて頂きました。
by ken (2005-08-31 11:59) 

cs

自分はスクリーンで観ましたが感想としてすごく近いものがありました。極端な作品なんですよね。でも駄作ではないと思います。与えられた状況下で本気出して失敗したかもしれません。でも、そういう果敢な挑戦をする機会を与えてこそ成り立つものって、大きな意味があるはずですね。5年前の邦画の状況では製作されなかった作品だといえます。何にせよ、ご指摘にあったとおり日本映画で現在可能な限りの贅沢な配役で完成できたのは偉業であると思います。
by cs (2005-08-31 14:01) 

Cinemanabu

>Kenさん
TB&コメントありがとうございます。
Kenさんにとって「CASSHERN」がヘタレ映画となってしまったことは残念です。ただ、「サンダーバード」(を褒める人に出会ったことはないので)と違って少数かもしれませんが「CASSHERN」が胸に響く映画であった人たちがいることも知っていていただければ幸いです。

>esさん
Nice&コメントありがとうございます。
いつか、この映画に刺激されて作品を作る人たちが傑作を世に送りだせれば素敵ですね。あのようなキャスティングで映画を組めたのは紀里谷監督の作ろうとした志に賛同した役者が多かったからかな(例えば、麻生久美子は必ず脚本を読んでから出演を決定する)と思っています。
by Cinemanabu (2005-09-01 10:41) 

lucksun

はじめまして。TBありがとうございました。
この映画は賛否両論激しかったみたいですね。
好き嫌いという判断ではなく、印象に強く残った映画でした。
映像はやっぱりステキだと思います。
こちらからもTBさせていただきます。
by lucksun (2005-09-02 01:55) 

Cinemanabu

>ludksunさん
コメントありがとうございます。連続したデザイン写真の連続のような映像はホントにスゴイですね。
また、好き嫌いを超えて観る人に強い印象を残せたのなら、それだけで作品として十分に価値のあるものだったかなと私は思っています。
by Cinemanabu (2005-09-02 10:26) 

Paro

はじめまして。
今年に入って衛星放送で観たクチです。
「CASSHERN」は、「映画とはこういうもの」という固定観念がある人には向いてない作品、理屈は抜きで感性で観る人向きな作品だなぁ、と思います。
観た後にスッキリしないものがありますが、インパクトがあって、私は割と好きですね。
by Paro (2005-09-04 06:06) 

Cinemanabu

>Paroさん
コメントありがとうございます。
そうですね。この映画を嫌いという方は「映画になっていなかった。」というようなコメントが多いかもしれませんね。
私は、いわゆる「映画」っぽい「映画」も好きですが「CASSHERN」のような作品も必要だと思います。
by Cinemanabu (2005-09-06 11:30) 

lin

こんちは、はじめまして、TBからお邪魔しました。
去年の邦画では「デビルマン」というトンデモ作品があったので、それに比べたら(比べるなよw)世界観は上手く作られていたと思うし、映像面のユニークさは出色だったと思います。ただどう考えてもストーリーはエピソードが細切れで「いきなり雪山&宮殿出現」に象徴されるような説明不足は、映画作るの下手糞だなと思ってしまったことも事実でw 言いたいこともやりたいことも十分伝わってくるんですが、総論OK各論壊滅、な印象でした、次回作に期待ですねw
此方からもTB返させて頂きました、またよろしくお願いしますw。
by lin (2005-09-16 15:31) 

Cinemanabu

>linさん
コメント&TBありがとうございます。
そうですね、確かにこの作品、脚本や構成に関していえば決して褒められるものではなかったかもしれません。
ただ、本当に作り手のパワーは伝わってくる作品だったので私も次回作や、この作品に刺激を受けた見知らぬ誰かが面白いものを作ってくれることに期待しています。
by Cinemanabu (2005-09-19 01:04) 

初めまして。
私は元ネタのアニメを見て育った世代なので、映画を観に行った時は『…コレって唐沢君の映画だよね…』が一番最初の感想でした。『全然キャシャーンじゃないし、フレンダー、タダの犬だし』(笑)
今回、テレビ放送とあって、再度見ましたが、やっぱり唐沢君にしか同情出来ない〜っ!!キャシャーンが正義に見えない〜っ!!でした。
けれども、元ネタを忘れて、全く違う作品として観れば完成された宵作品だったと私は思っています。賛否両論ありますが…。
放送時間の関係でカットされていた部分が多くてちょい悲しかったですね。
by (2006-02-13 23:14) 

Cinemanabu

>日垣 さん
コメントありがとうございます。
原作に思い入れがある方は、その違いっぷりに違和感を強く感じてしまうみたいですね。
この映画、プロモーションのCMでも「キャシャーンがやらねば誰がやる?」というセリフを唐沢さんが言っていたので、私は実際に鑑賞するまでは「唐沢=キャシャーン」だと勘違いしていました。
テレビ放映ということで、「え!そんなとこでCM?」という編集にはなっていましたが、多くの人の目に触れてほしかった作品だったので、しょうがないのかも知れません。でも、やっぱり悲しいですが。
by Cinemanabu (2006-02-14 12:48) 

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